人参、タマネギ、ジャガイモ、そして肉。
 正直この組み合わせは反則だよなあ、とユーノは鍋の中をかき混ぜながらぽつりと一つ言葉を落とした。
 ミッドチルダの冬は寒い。ほかほかと湯気を上げる白いシチューが、ユーノの胃袋を激しく揺さぶっていた。
「……コーン、入れた方が良いかな」
 一口味見をして、口元に指を当てながら悩む。それは端から見ればとても女性らしい動作だったが、あいにくユーノは気付いていない。
 ――ヴィヴィオはたしか、コーン好きだったっけ。
 自然に浮かんできたその思考に、思わず苦笑するユーノ。
 彼の親友である高町なのはが、何かある度にちょくちょく無限書庫へ預けていくおかげで、すっかり父親のようなことを考えるようになってしまった。
 手作りの夕飯を食べさせたことだって、数え切れないくらいある。
 でも、今日は居ない。今日はなのはも非番で、フェイトと三人で一緒にご飯を食べているはずだ。
 花咲くようあの子の満面の笑みが、まぶたの裏にありありと浮かんでくる。
「……うわ、何この顔」
 お玉の裏に移った、あの子の幸せをにやにやしながら考えている自分に気付いて、ユーノは顔を引き締めた。
 うん、やっぱり入れよう。
 冷蔵庫からコーンの缶詰を取り出してきて、ふたを開ける。そのままシチューのどばっと放り込んで、ふたを閉めた。あとは煮込むだけだ。
「……あ、そういえば」
 ユーノはふと、戸棚の奥にしまい込んである、なのはから貰った日本のお酒。
 たしかワイン蒸しや、シチューと良く合うと言っていたはずだ。
 ――今日は、久々に飲むかな。
 しかし一人で飲む酒というのも、寂しいものがある。せっかくだから、日頃の愚痴でもぶつけてやるか。
 ユーノは携帯を取りだして、悪友の元へ電話をかけるのだった。
 
 
 
 おまけ
「お、このシチュー上手いな」
「ん、そう?普通に作っただけなんだけど」
「ああ、酒と良く合うよ……って、ん?なんだこの茶色いカスは?」
「え、なに……ああ、それね、鰹節だよ」
「……鰹節?」
「これ、もともとは豚汁だったから」
「なん……だと……」
 
 
 終わる。